生体からの心臓移植?

アメリカの臓器移植に関する統計は、「全米臓器調達・移植ネットワーク(Organ Procurement and Transplantation Netwaork)」のページに行くと、最新の情報が入手できて、授業で使うときや、いろいろ考えるときには、役に立ちます。
  OPTN: Organ Procurement and Transplantation Network

さて、このデータを見ていて、気になったことを1つ。
2006年のアメリカでの心臓移植は2193件行われているのですが、そのうちドナーが死んだ人(アメリカの多くの州の基準では「脳死」を含むと言われています)からの移植が2192件。
つまり、生きている人からの移植が1件あるのです。
これって?


1996年にも生体からの心臓移植が1件、1994年には3件、1993年にも2件あります。1992年は1件、1991年は4件、1990年に12件…

生きている人の心臓を取り出すというのは、要するに「殺人」という感覚があるのですが、このデータは、どういうことなのか…
脳死した人からの心臓摘出を「生きている人」からということにして報告している州があるのかな?

2006年の1件はオハイオ州、1996年の1件はオレゴン州。1994年はカリフォルニア州で2件とワシントン州で1件。こうした「生体からの心臓移植」を行っている州は、同時に、「死体からの心臓移植」も行っているので、単なる入力ミスなら訂正するだろう、なんて思ってしまうのですが…
本当に法律上は「生きている人」からの心臓摘出が行われているのだとすれば、いわゆる「違法性阻却」論による解釈で「生きている人」からの心臓摘出も正当化されているということになるのだけれども…「殺人」を違法性阻却することは出来ない、というのが日本の刑法学者の多くが主張しているところだと理解しています。だから、「脳死=死」にしないとダメだ、と言われるのです。でも、このアメリカのデータは、何を意味しているのだろう?

ただ、アメリカでの脳死や臓器移植に関しては、州によって法律が異なるのでもっと調べてみないとわからないところです。

それにしても、不思議なデータです。