TBSドラマ「MR.BRAIN」…

宣伝も広く行われ、初回の視聴率も高く、生徒や学生に聞いても見ている人が少なくなかったTBSドラマの「MR.BRAIN」ですが、期待が過大だったせいか、ここまでは、やや期待はずれかな、という印象です。

最近、「脳科学」や「脳神経科学」が注目を集めています。こうした「ブレイン」「ニューロ」系の議論が盛り上がると同時に、「バイオエシックス」に取って代わる新しいエシックスとして「ニューロエシックス(脳神経倫理、脳倫理などと訳されることもあり)」という分野を確立しようという動きもあります。『脳のなかの倫理―脳倫理学序説』は、その嚆矢とされる文献です。
こうした「ブレイン」「ニューロ」が流行する傾向に対して、哲学者の河野哲也氏による『暴走する脳科学 (光文社新書)』などは批判的な議論を紹介、展開しています。
いずれにせよ、「ブレイン」「ニューロ」系の議論は、ちょっとした流行を見せているとも言えるわけです。(ひょっとすると既に、「流行だった」という過去形なのかもしれませんが…)

だから、「脳科学」を前面に打ち出している流行のドラマが、どのくらいの「脳科学」を見せてくれるのか期待していたわけですが…

初回や第3回のオンエアで登場したfMRIは、ある意味で先端的な技術でしたが、ここまでのところ、「脳科学」という「科学」が犯罪捜査に活かされるのは、それだけ。それもfMRIのデータには、おそらく証拠能力はない。だから、自白(自首?)を導くことに使ったり、他の証拠を示す必要があったり。このドラマは、「脳科学者の言うこと=脳科学の知見に基づいたこと」ではない、という好例なのかもしれません。
まあ、SFではなく現実的な脳科学の知見に基づいている、ということで、自重しているのかもしれませんが。
加えて、こうした脳科学の知見を犯罪捜査に活用する(脳科学者が捜査に協力する)という設定なのですが、「探偵ガリレオ」のように「科学者」という存在感よりは、ちょっと鋭い探偵みたいな感じで、「脳科学者」という立場がややアイマイな印象も受けました。ひょっとすると、そういう立場であることが、このドラマの鍵なのかもしれませんが。

脳科学を犯罪捜査に活用するときに出現するハズの葛藤や問題が浮かび上がるようなエピソードもここまではなく、とりあえずエンターテイメントという枠からは出ないのかな、と思っています。
まあ、エンターテイメントになるくらい「脳科学」は受け容れられつつある、ということかもしれませんが。

6日(土)にオンエアされた第3回のエピソードでは終盤に、(ちょっと前のNHKスペシャルで話題になった)恋愛と脳科学との関係がチラっと出てきて、最後に、こんなやり取りがありました。
「すごいですね、脳科学って。あんなことまでわかるなんて。でも、何か、怖いです。」「僕もです。」
このセリフがもっと展開されてゆくことを期待しつつ、(でも大きな期待をせずに)今後の展開を楽しみにしてゆきたいと思います。

TBS ドラマ 『 MR.BRAIN (ミスターブレイン) 』