「臓器移植法」の改正案について(各法案の原文へのリンク&世論調査結果へのリンク)

昨日も書いた、「臓器移植法」の改正(ひとまず、一般に使われているこの表現を用います)に関して、衆議院厚生労働委員会小委員会にて4月21日(火)午前中に参考人質疑を行い、その後論点を整理するのみで、親委員会である厚生労働委員会での審議を飛ばして、直接本会議で採決するというスケジュールだという情報がありました。5月の連休明けにも、衆議院本会議での採決、ということもあり得るとか。
このスピード感は、いったい何なのだろう…
脳死・臓器移植をすべて否定したいとは思わないですが、それにしても、レシピエントサイドばかりが強調される「改正論議」に、不安がないわけではないです。採決にあたって党議拘束は外される見込みとのことですが、国会議員の方々が、どの程度、真剣に考えてくれているのか不安だったりします(以前、ある国会議員の方があまりにも雑な知識で持論を展開されていたので…)。

とりあえず、新聞報道だけではよくわからない部分もあったので、衆議院のホームページから現在、「継続審議」となっている3つの改正案について、備忘録的にリンク一覧を作成しました。(衆議院のトップページから「議案」→「衆法の一覧」の表中より)


中山太郎ほか五名によって提出された「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案」(提出回次:第164回、衆法14号)
 → ●こちら…いわゆる「A案」

石井啓一ほか一名によって提出された「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案」(提出回次:第164回、衆法15号)
 → ●こちら…いわゆる「B案」

金田誠一ほか二名によって提出された「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案」(提出回次:第168回、衆法18号)
 → ●こちら…いわゆる「C案」

A案、B案、C案という名称は、法律案の提出順だったんですね。法律の文面というのは、普通の感覚からすると、とてもわかりにくいものですが、新聞報道などでは看過されているポイントも(親族への優先提供など)いくつか発見しました。
  ●親族への優先提供については、4月21日のエントリーで

ともかく、連休明けにも衆議院本会議で採決されるとなると、ちょっと慌しいですね。講義で「脳死臓器移植」を扱う予定を前倒しした方が、いいのかな…

※追記(2009.5.19)
新たに提出されたD案を含めた比較は、5月19日のエントリーなどで試みています。


ついでに、これもよく引用される内閣府による世論調査のリンクも。
内閣府の世論調査のトップページ

「臓器移植に関する世論調査
 ○2008年9月調査
 ○2006年11月調査
 ○2004年11月調査
 ○2002年7月調査
 ○2000年5月調査
 ○1998年10月調査
とりあえず、数字がどう変化したか、という前に「質問」や「選択肢」の文面や順番が変化してますね。厳密な意味で比較できない、ってことになるのでしょうか?

あと資料として閲覧させている「脳死について」という説明文が、なんとも…
「呼吸などを調節している部分も含め、脳全体の機能が停止し元には戻らない状態。人工呼吸などの助けによって、しばらくは心臓を動かし続けることもできるが、やがては心臓も停止する。」
微妙にぼかしてありますが、「やがて」ってどのくらいの期間なのでしょうか?
いわゆる「長期脳死」の事例の話や「ラザロ徴候」の存在、あるいは、「脳死判定」が除外される場合など、細かい話は一切抜きですね。
脳死・臓器移植についての生命倫理を研究している者としては、あまりにも「古い」そして「雑な」説明で、ちょっと驚きです。この10年間の調査研究の知見というものは、何もないのでしょうか?
2008年調査では、15歳未満の臓器提供の意思表示について聞く設問が3つあります(Q13〜Q15)。「15歳未満」っていったら、生後直後の赤ちゃんも含まれるってこと?とか、思ってしまったり。小児の長期脳死例などを一緒に提示したら、きっと調査結果も変わるんだろうな、なんて思いました。

ちなみに、上記の「脳死について」の説明文中にある「人工呼吸」という表現ですが、1998年調査のときは「人工呼吸器」となっていました。(それ以降の調査では「人工呼吸」となっていました。)
さらに、2008年調査、2002年調査、2000年調査、1998年調査では、「脳死状態とは」として上記の説明が付されていたのに対して、2006年調査と2004年調査では「脳死とは」として上記の説明が付されていました。
細かいことですが、この違いには、何か意図があるのでしょうか?

社会調査をする場合には、どうしても簡略化してわかりやすい説明が求められるわけですが、それにしても、いろいろツッコミどころ満載の調査ですね…