改正案の比較(2)現行法第6条はどう変わるのか

現在、国会に提出されている「臓器移植法改正案」は4つになりました。その比較というか、それぞれの法案について、まだまだよくわかっていない、もう少し考えないといけないのではないかと思う今日この頃です。
先日のエントリーではちょっと横道にそれてしまったので…

まずは臓器の摘出を定めた現行法の第6条関連の修正について、です。この第6条では、「脳死」に関わることも規定されており、重要な部分です。また「親族への優先提供」など第6条に続いて挿入される条文も挙げました。(「親族への優先提供」の問題点については、4月21日のエントリーに少し書きました。)
衆議院のHPに、4つ目の法案(D案)の情報がよくやくアップされましたので、それも含めて、A案、B案、C案、D案に基づいて修正された場合に、どのような文面になるのか、以下に記します。

青字かつ太字になっている部分は修正により追加される文言、取り消し線が入っている部分が削除される文言です。なお赤字はこのエントリーでの補足説明です。※携帯などでは取り消し線が表示されないようです。ごめんなさい。また、一部、はてなの機能でキーワードが黒字になってしまい見にくくなっています。



A案に基づく第6条関連の修正 ●こちらの情報に基づきます。

(臓器の摘出)
第六条
 医師は、死亡した者が生存中に臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないときは、この法律に基づき、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。
 医師は、次の各号のいずれかに該当する場合には、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。
 一 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないとき。
 二 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であって、遺族が当該臓器の摘出について書面により承諾しているとき。



2 前項に規定する「脳死した者の身体」とは、その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたものの身体をいう。


3 臓器の摘出に係る前項の判定は、当該者が第一項に規定する意思の表示に併せて前項による判定に従う意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けたその者の家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないときに限り、行うことができる。
 臓器の摘出に係る前項の判定は、次の各号のいずれかに該当する場合に限り、行うことができる。
 一 当該者が第一項第一号に規定する意思を書面により表示している場合であり、かつ、当該者が前項の判定に従う意思がないことを表示している場合以外の場合であって、その旨の告知を受けたその者の家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないとき。
 二 当該者が第一項第一号に規定する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であり、かつ、当該者が前項の判定に従う意思がないことを表示している場合以外の場合であって、その者の家族が当該判定を行うことを書面により承諾しているとき。



4 臓器の摘出に係る第二項の判定は、これを的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師(当該判定がなされた場合に当該脳死した者の身体から臓器を摘出し、又は当該臓器を使用した移植術を行うこととなる医師を除く。)の一般に認められている医学的知見に基づき厚生労働省令で定めるところにより行う判断の一致によって、行われるものとする。
5 前項の規定により第二項の判定を行った医師は、厚生労働省令で定めるところにより、直ちに、当該判定が的確に行われたことを証する書面を作成しなければならない。
6 臓器の摘出に係る第二項の判定に基づいて脳死した者の身体から臓器を摘出しようとする医師は、あらかじめ、当該脳死した者の身体に係る前項の書面の交付を受けなければならない。


 (親族への優先提供の意思表示)
第六条の二 移植術に使用されるための臓器を死亡した後に提供する意思を書面により表示している者又は表示しようとする者は、その意思の表示に併せて、親族に対し当該臓器を優先的に提供する意思を書面により表示することができる。



B案に基づく第6条関連の修正 ●こちらの情報に基づきます。

(臓器の摘出)
第六条
 医師は、死亡した者が生存中に臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合(当該意思の表示が十二歳に達した日後においてなされた場合に限る。)であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないときは、この法律に基づき、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。
(以下、第六条2項から6項までは変更なし)


(親族への優先提供の意思表示)
第六条の二 移植術に使用されるための臓器を死亡した後に提供する意思を書面により表示している者又は表示しようとする者(十二歳に達した日後において当該意思を表示した者又は表示しようとする者に限る。)は、その意思の表示に併せて、親族に対し当該臓器を優先的に提供する意思を書面により表示することができる。



C案に基づく第6条関連の修正 ●こちらの情報に基づきます。

(臓器の摘出)
第二章 死体からの臓器等の摘出等
(臓器の摘出)
第六条
 医師は、死亡した者が生存中に臓器を移植術を臓器の移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないときは、この法律章の規定に基づき、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。


2 前項に規定する「脳死した者の身体」とは、その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって脳幹を含む全脳脳全体のすべての機能が不可逆的に停止する喪失するに至ったと判定されたものの身体をいう。


3 臓器の摘出に係る前項の判定は、当該者が第一項に規定する意思の表示に併せて前項による判定に従う意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けたその者の家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないときに限り次の各号のいずれにも該当する場合、行うことができる。
 一 当該者が第一項に規定する意思の表示に併せて前項による判定に従う意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けたその者の家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないとき。
 二 当該者が、脳の器質的な障害により、深昏(こん)睡の状態(厚生労働省令で定める状態をいう。)及び自発呼吸を消失した状態にある場合
 三 当該者について、脳の器質的な障害の原因となる疾患が確実に診断されていて、当該疾患に対して行い得るすべての適切な治療を行った上で回復の可能性がないと認められる場合
 四 その他厚生労働省令で定める場合



4 臓器の摘出に係る第二項の判定は、これを的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師(当該判定がなされた場合に当該脳死した者の身体から臓器を摘出し、又は当該臓器を使用した移植術を行うこととなる医師を除く。)の一般に認められている医学的知見に基づき厚生労働省令で定めるところにより行う判断の一致によって、行われるものとする。
5 前項の規定により第二項の判定を行った医師は、厚生労働省令で定めるところにより、直ちに、当該判定が的確に行われたことを証する書面を作成しなければならない。
6 臓器の摘出に係る第二項の判定に基づいて脳死した者の身体から臓器を摘出しようとする医師は、あらかじめ、当該脳死した者の身体に係る前項の書面の交付を受けなければならない。


第六条の二 医師は、死亡した者が生存中に心臓弁、膵(すい)島その他の臓器に含まれる組織であって厚生労働省令で定めるものを含む臓器を当該組織の移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないときは、この章の規定に基づき、当該組織の移植術に使用されるための臓器を、前条第二項の脳死した者の身体以外の死体から摘出することができる。


(組織の摘出)
第六条の三 医師は、死亡した者が生存中に組織(前条に規定するものを除く。以下この条において同じ。)を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該組織の摘出を拒まないとき又は遺族がないときは、この章の規定に基づき、移植術に使用されるための組織を、第六条第二項の脳死した者の身体以外の死体から摘出することができる。


(臓器等の摘出及び移植術が行われる病院等)
第六条の四 前三条の規定による臓器等の摘出及び当該臓器等又は当該臓器に含まれる組織を使用した移植術は、厚生労働省令で定める基準を満たした病院又は診療所において行われるようにしなければならない。



D案に基づく第6条関連の修正 ●こちらの情報に基づきます。

(臓器の摘出)
第六条
 医師は、死亡した者が生存中に臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合(当該意思の表示が十五歳に達した日後においてなされた場合に限る。)であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないときは、この法律に基づき、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。


2 前項に規定する場合のほか、医師は、死亡した者がその死亡の当時十五歳未満である場合において、その生存中に前項に規定する意思がないことを表示しているとき以外のときであって、次の各号のいずれにも該当するときは、この法律に基づき、移植術に使用されるための臓器を、死体から摘出することができる。
 一 当該者の遺族が当該臓器の摘出について書面により承諾していること。
 二 当該臓器の摘出が行われる病院又は診療所において、厚生労働省令で定めるところにより、当該者の遺族に対する当該臓器の摘出に関し必要な事項についての説明が不適切であったこと、当該者に対するその遺族による虐待が行われた疑いがあることその他の移植医療の適正を害するおそれのある事実として厚生労働省令で定める事実がない旨の確認がされていること。



 前項第一項に規定する「脳死した者の身体」とは、その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたものの身体をいう。


 臓器の摘出に係る前項の判定は、当該者が第一項に規定する意思の表示に併せて前項による判定に従う意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けたその者の家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないときに限り、行うことができる。


5 前項に規定する場合のほか、臓器の摘出に係る第三項の判定は、当該者が同項による判定が行われる時に十五歳未満である場合において、第一項に規定する意思がないことを表示しているとき以外のときであり、かつ、第三項による判定に従う意思がないことを表示しているとき以外のときであって、次の各号のいずれにも該当するときに、行うことができる。
 一 当該者の家族が当該判定を行うことを書面により承諾していること。
 二 当該判定が行われる病院又は診療所において、厚生労働省令で定めるところにより、当該者の家族に対する当該判定及び当該臓器の摘出に関し必要な事項についての説明が不適切であったこと、当該者に対するその家族による虐待が行われた疑いがあることその他の移植医療の適正を害するおそれのある事実として厚生労働省令で定める事実がない旨の確認がされていること。



 臓器の摘出に係る第二項第三項の判定は、これを的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師(当該判定がなされた場合に当該脳死した者の身体から臓器を摘出し、又は当該臓器を使用した移植術を行うこととなる医師を除く。)の一般に認められている医学的知見に基づき厚生労働省令で定めるところにより行う判断の一致によって、行われるものとする。


 前項の規定により第二項第三項の判定を行った医師は、厚生労働省令で定めるところにより、直ちに、当該判定が的確に行われたことを証する書面を作成しなければならない。


 臓器の摘出に係る第二項第三項の判定に基づいて脳死した者の身体から臓器を摘出しようとする医師は、あらかじめ、当該脳死した者の身体に係る前項の書面の交付を受けなければならない。

改めて、法律の文面ってわかりにくい…って感じました。
C案は、第6条だけではなく、「生体移植」に関しても新たに規定する法案なので、他の条文に関しても多くの修正がなされるようです。
マスメディアで繰り返される単純化された「批判」の図式に囚われることなく、それぞれの法案がどのような変化をもたらすのかを、きちんと考えなければいけないと思います。単純化された「批判」の図式については、5月11日のエントリーを参照してください。
それぞれの「改正案」による修正の詳細、その意味については、改めて…