党議拘束を外しても結局は…。「虐待」対策はどうするのか…。

いよいよ明日の衆議院本会議で「臓器移植法改正案」の採決が行われるのですが、「党議拘束を外す」というのは名ばかりの様相を呈してきているようです。
移植を待つ子どもを救うため、とはいえ、A案の内容で臓器移植法が「改正」されても、すぐには、子どもの脳死からの臓器提供は出来ないという事実は、確認しておきたいです。

NHKによる国会議員の動向の取材結果では、A案支持は「自民党の議員を中心に最も多い150人以上の支持」、ついでD案が「自民党民主党の議員を中心に50人余りの支持」、C案は「民主党社民党などの議員から」10人から20人の範囲、そしてB案は「公明党の議員を中心に」10人から20人の範囲、とのことです。
 http://www3.nhk.or.jp/news/k10013677093000.html

結局は、所属政党の重鎮が支持する「改正案」に流れる議員さんが多いということなのでしょうか。
たとえば、A案支持を明言している自民党衆議院議員国務大臣経験者を挙げると、A案の提出者でもあり元外務大臣である中山太郎議員(84歳)、自民党総務会長の笹川堯議員(73歳)、元文部科学大臣官房長官河村建夫議員(66歳)は、すぐに思いつくところとなります。
ともかく、今回は記名投票とのことですから、どの議員がどのような選択をしたのか、後から検証できるようです。
 http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009061701000654.html

毎日新聞日本テレビが行った世論調査の結果も出ていますが、質問の仕方、選択肢の置き方で、結果に影響を及ぼすことが出来るということの好例となっています。(そもそものサンプル数、有効回答数を考えると、「世論」の調査とは言いがたいもののように思いますが…)
 毎日新聞 世論調査 日本テレビ 世論調査


ちなみに、もしA案の内容で臓器移植法が改正されても、すぐに、6歳未満の子どもの法的脳死判定が可能となって脳死からの臓器提供が出来るわけではありません。現在、臓器移植法と省令で定められている「脳死判定基準」では「6歳未満」の子どもは、「(法的)脳死判定」が出来ないことになっています(除外例)。
ここで除外された小児の脳死判定基準については、4月21日の参考人意見聴取でも取り上げられていましたが、小児科医の間でのコンセンサスが出来ているわけではなさそうです。それでも、「経験を積めば、高い確率で小児の脳死の診断が可能」とも言われています。けれどもこれは、経験豊富な専門家が慎重に行わないと難しい、ということなのかなと思います。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090604-00000001-cbn-soci
いずれにせよ、小児の確実な脳死判定は簡単なものではないようです。さらに、「脳死」と判定や診断されても「長期脳死」の事例をどう受け止めるのかということもあります。法律を「改正」しても、移植のために海外へ渡航する親子がゼロになるわけではない、というのが妥当な予測のように思います。

そして「虐待」への対応という問題もあります。
アメリカのデータをみると小児のドナーの多くが「児童虐待」に遭っていた事実は明らかです。
たとえば2008年には、1歳未満でドナーとなったのは114人。そのうち「死の状況(Circumstance of Death)」が「児童虐待(child abuse)」であるものは46人です。なんと40%もの1歳未満のドナーは「虐待」を受けていたということでしょうか。
また、1歳から5歳でドナーとなったのは221人おり、そのうち「死の状況」が「児童虐待」となっているのは62人、28%という数字になります。
 http://optn.transplant.hrsa.gov/のサイトで知りたいdataをアレンジして確認できます。

虐待を受けた子どもでも、とにかく、もらえる臓器はもらっておく、という考え方なのでしょうか…。いずれにせよアメリカのデータは、ちょっと怖い現実を映しているように思います。