魍魎の匣

京極夏彦の『魍魎の匣』を、7〜8年ぶりに読み直してしまいました。
2008年10月から12月にアニメ化されて放映されていたこともあり、また、高校生から「面白かった」という反応をもらったこともあり、久々に読み返してみることにしたのです。

いろいろな読み方が出来る作品、ということを改めて感じました。
国語科の先生からは、この作品の作中小説としてでてくる「箱」と旅している男性の描写が、江戸川乱歩の短編「押絵と旅する男」(『日本探偵小説全集〈2〉江戸川乱歩集 (創元推理文庫)』などに所収)とよく似ていると教わりました。
京極堂」が述べるウンチクのなかには、「正常/異常」の境界の社会構築的な性格などもあり、とても「社会学的」で興味深いところです。

もちろん、「機械」につながれて保たれる「生」の意味をめぐって、延命治療の是非なんかも考えさせられます。立岩真也の『ALS 不動の身体と息する機械』あたりを思い出したりもしました。
「人工臓器」の研究開発をめぐって、臓器移植という医療の本質なんかも考えさせられます。
戦争中の研究のあり方なんかも、考えずにはいられないものです。

そんなわけで今年の授業では、『魍魎の匣』を参考文献の一冊として紹介することに決めたわけです。

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)